経理でAIを使った活用事例と、自動化できる業務内容を解説

ここ数年、「働き方改革」の一環として、残業時間やヒューマンエラーを削減し、反対に効率性と正確性を向上させるAIの導入を検討する企業が増えています。

AIとはArtificial Intelligence(人工知能)の略で、データを活用して「識別・認識」「予測・分析」「実行・処理」 を行うことが可能です。繰り返し学習していくことで、その効果はさらに増していきます。これだけ聞くと魅力的で夢のようなツールに思えるかもしれませんが、AIに関する専門知識を持った人材が社内にいないことや構築にかかる費用と時間を考えると導入する価値があるのか見極めが必要なことも事実です。

ここでは

  • 経理でAIが活用可能な事例
  • AIが活用可能な経理の業務
  • AIの活用が難しい経理の業務

について解説していきます。実際に効果を実感したケースと経理業務の内、どの業務を自動化できるのか具体例を出していきますので、自社と照らし合わせながら読んでみてください。

1. 経理でAIが活用可能な事例を解説!

ここでは経理業務をAIを活用して改善した事例を3つ紹介します。それぞれ活用例が異なりますので、もしかしたら自社の課題に即した内容かもしれませんので、ぜひ参考にしてみてください。

国内食品総合商社の例:

目的:ばらばらに管理していた会計管理システムの刷新

導入前の状況:販売管理領域と会計領域が独立で稼働していたため、二重入力や確認作業が発生し、電子帳票化にも対応できなかった。会計領域内でも、財務会計と管理会計を別々に処理しており、財管一致のために属人的な作業を要していた。

導入後の成果:「導入前は月間約3万枚も入力していた会計伝票が月間約100枚に減少し、入力や仕訳の手間が大幅に削減された。データをそのまま管理会計情報として使用できるようになりペーパーレス化も実現。

国内大手サービス業R社の例:

目的:経理業務負荷の軽減

導入前の状況:顧客からの入金が月数十万件ほどあり、銀行振り込みを社内の会計システムに登録されている債権とぶつける「入金の消し込み」に追われていた。

導入後の成果:月平均5,000件の確認案件が、これまでルールベースで行っていた再仕訳のフィルタリングを、機械学習に置き換えたことで1,000件へ。さらには人による再仕訳は80件にまで減らせる見込み。

欧州自動車メーカーの例:

目的:買掛金業務の作業負担軽減と自動化

導入前の状況:請求書情報の確認、データ入力、入力データの検証、総勘定元帳への転記といった一連の作業をすべて人が行っていた。ERPを導入しても自動化は進まなかった。

導入後の成果:請求書の情報をスキャナーで読み取り、データの入力・検証・転記をAIが実施。人は、結果を検証するのみ。結果、定型業務の作業時間を削減(65%〜75%減)できた。さらにエラーも削減することができた。

 

2. AIが活用可能な経理の業務

パターン化されている業務はAIで対処が可能となります。経理業務の中でのルーティン業務には、以下のものが挙げられます。

  • 日次業務
  • 月次業務
  • データチェック業務

例えばAIであれば銀行通帳やカード会社の明細を読み取り連動させることで、自動的に仕訳してくれます。最初のうちこそ訂正が必要な場合もありますが、仕訳学習機能があるので数を重ねるごとに訂正する回数が減っていきます。

取り込んだ仕訳はそのまま総勘定元帳や残高試算表に連動されるため、今まで入力に費やしていた時間が大幅に省略され、毎月の経理処理をより迅速に行うことが可能になるのです。

2-1. 日次業務

日次業務でAIが活用できそうな項目は以下のようなものです

  • 現金と預金管理
  • 帳簿への記帳
  • 伝票管理

お金に関連する取引業務をすべて記録し、常に現金がいくら手元にあるのか?預金残高はいくらあるのか?を把握できるようにします。

2-2. 月次業務

月次業務でAIが活用できそうな項目は以下のようなものです

  • 月次損益計算書の作成
  • 月次貸借対照表の作成
  • 月次キャッシュフロー計算書の作成
  • 給与計算
  • 請求・支払業務
  • 領収書のデータ入力

月単位で月内に支払う額や来月に回す支払いまたは請求を月次貸借対照表・損益計算書で管理しています。

2-3. 膨大なデータをチェックする業務

膨大なデータを確認して類似項目を機械的に抽出するような業務はAIが向いている

請求書の発行、売上や入金の仕訳作業、帳簿データや財務諸表の解析など、膨大なデータを高速で処理することが可能です。
24時間365日稼働し、ミスなく正確に処理してくれるという利点があります。

また、企業の帳簿データを解析し、通常より大幅に高い単価での取引など不正の兆候を見つけたり、財務諸表の解析で過去に不正があった企業の例に照らし類似する特徴がないかを洗い出すなど、人間がやると多大な時間がかかる作業も短時間で完了させます。

データから異常値を検出する目的にもAIが使える

今日では、貸借対照表や損益計算書の各勘定科目について「税務上のルールとの相違」「ありがちな作業漏れや誤り」「過去データとの大きな差異」に基づいて、修正する必要がありそうな仕訳を自動で検知し、ハイライトする機能を搭載したAIも出てきています。

 

3. AIの活用が難しい経理の業務

ここまででかなり業務をAIが代替してくれることがわかりました。一方でAIでも対応できない業務はどういったものでしょう?以下の2つがあげられます

  • 例外処理
  • 重要項目の最終チェック

それぞれ詳しく解説していきます。

3-1. 例外処理

AIは日常的な業務から派生する例外処理が苦手なため、今の技術力では人による作業が必要です。例えば、契約書の画像を取りこむだけで、それに紐づく会計仕訳(期間按分、前受金、前渡金の判別など)を自動生成させて会計データに流し込むといったことは現状できません。

「会社や人による都合」により発生する例外も同様です。例えば、支払期日について一切例外を認めず管理するなら、支払期日を固定させることは可能です。しかし現実は、業務上の理由で支払日を変更せざるを得ないケースが出てくるのです。

3-2. 重要な項目の最終チェック

すべてをAIに任せることはできないため、重要な項目は人間による対応が必要となります。得意先によっては

  • 請求額通りに支払われていない
  • 値引きや返品の発生
  • 振込手数料の未納

など、イレギュラーな対応は結局のところ人間が対応することになります。

 

4. まとめ

上に挙げたように、AIは活用方法とタイミングによっては大きな力を発揮することがわかります。ただし、経理業務すべてを自動化できるわけでも、すぐに効果が出るというわけでもありません。


まずは、今の業務内容と工程を棚卸して、何が課題でどう改善したいのかを一つ一つ洗い出す必要があるでしょう。現場の声をヒアリングしながら段階を追って自動化を進めていくことで、業務内容のスリム化はもちろん、経営者のブレインとして「戦略的な経営管理」を行っていく基盤を構築することができるでしょう。